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施設内での取組

学習療法

ケアハウスゆうわ苑では、認知症の予防および改善を目的とした「学習療法」を導入しています。

これまで認知症を伴う高齢者のコミュニケーション能力や身辺の自立性を改善させるための療法は、数多く提唱され、実践されていますが、残念ながら経験則による方策がほとんどであり、科学的・客観的根拠に基づいて実践されているものを見つけることは困難です。

東北大学の川島隆太教授を代表とする共同研究グループにおいて、まず、コミュニケーション能力を含むこれらの能力を制御しているのは脳の前頭前野であることに注目し、過去に行ってきた脳機能マッピング研究の成果から、前頭前野を効率よくかつ簡便に刺激する課題の選定を行いました。そして読み書き計算が、簡便かつ最も両側半球の前頭前野を活性化させることを発見しました。
この結果をもとに平成13年より福岡県の介護老人施設、平成15年より仙台の介護老人施設で認知症を伴う高齢者の方々に読み書き計算の学習を行っていただく実験を実施し、様々な成果を上げることができました。
そしてこれらの方法は「学習療法」と名づけられました。(*1)

写真:学習療法の様子

学習療法の目的および方法について

ケアハウスゆうわ苑の介護サービスをご利用されておられる方々に読み書き・計算といった学習が、高齢者の方々の脳機能全般を改善し、それによりADL(*2)の維持・改善を図ることを目的としています。

高齢者用の読み書き・計算の教材を使った学習を週5回、1回30分程度通常の日課に組み込んで、スタッフの支援によって行なわれます。

学習にあたって前頭葉機能の検査としてFAB検査(*3)と認知障害測定の検査としてMMSE検査(*4)を行います。

写真:学習療法の様子

予想される効果について

この学習を行うことによって認知機能、コミュニケーション機能、身辺自立機能の維持および改善が期待されます。しかし効果の度合いは個人差があります。この学習を行うことで、脳機能の老化を軽減、改善する効果を、すぐには期待できません。
また、この学習には薬や器具を用いませんから危険性は一切ありません。

*1 学習療法の定義
学習療法とは、音読と計算を中心とする教材学習を、学習者と指導者がコミュニケーションを取りながらおこなうことにより、学習者の認知機能やコミュニケーション機能、身辺自立機能などの前頭前野機能の維持・改善をはかるものである。
*2 ADLとは
日常生活動作:食事や着替え、排せつ、入浴、整容などの身の回り動作、歩行・車椅子の操作などの動作をいいます。
*3 FABとは
Frontal Assessment at Bedsid(簡易前頭葉機能検査):面接で、言葉と動作によって行われる5分程度の簡便な検査です。前頭葉機能を測定します。
*4 MMSEとは
Mini-Mental State Examination:認知障害測定の尺度で、認知能力や記憶力を簡便に検査する11項目の設問で構成されています。認知機能全般を検査します。